第4章 十八、白昼夢
「勿論綺麗な服を着て,お前の隣でかしこまっているのも可愛いよ。でもいつまでもそうしておくだけじゃ勿体ないんじゃないか?可哀想かどうかは知らないけど」
「……」
「あんまり恋次なんかとも遊べていないんだろう?ちょっとは羽を伸ばさせてやったら」
「……私が強いているのではない」
「ま,そりゃそうかもしれないけど」
ルキアちゃん真面目だから,お前が言ってやらないとわからないよ。そう言った声は,蝉時雨にかき消されそうだった。
蓮と虎次郎に腕を引かれて,ルキアがプールに倒れこんだ。縮こまっていたほのかが慌てる。一瞬呆然としたルキアが,弾けるような笑顔を見せた瞬間,すずめのホースがルキアを狙った。
歓声と蝉の声は,やまない。
「……平和だねぇ」
「ああ」
「夢みたいだ」
「そうだな……」
夢は長くは続かない。
そう言いかけて,満流は口を閉ざした。
平和な日々が,続く夢。
愛しい妹が,太陽の下で笑う夢。
さて,視線の先の者たちは,どんな夢を見るのだろう。
満流はそうして,ずっと庭を眺めていた。
白哉が帰り,皆が遊び疲れて戻るまで。
ずっと夢を見ていた。