第5章 おやすみなさい
―(おそ松視点)―
ベッドに入ってから数十分後。
隣からはスヤスヤと寝息が聞こえてきた。
おそ「…。」
あれだけ嫌がってたわりには…寝るの早いな。
こちらに背中を向けて眠る愛ちゃんの顔を覗き込むと、静かに寝息を立てながら枕に滴を落としていた。
おそ「あらら。どーしたの愛ちゃん。」
小声で話しかけながら目元を拭いてやると、愛ちゃんの口がむぐむぐと動いた。
おそ「…ぷふっ。」
女の子って、可愛いなぁ。
おそ「よいしょっと。」
ベッドランプを消してから、愛ちゃんにもう一枚毛布をかけてあげる。
『ん…。』
愛ちゃんは、寝返りを打ったかと思うと俺の左腕に弱々しくすり寄った。
おそ「…。」
俺は黙って、ベッドの端にいた愛ちゃんを自分の方へ抱き寄せた。
おそ「…愛ちゃんの体温は低いなぁ。」
心地が良いくらいにひんやりとした愛ちゃんの肌を優しくさする。
『…。』ピクッ
眠りながらも、彼女の目から滴がぽろぽろとこぼれ落ちる。
おそ「なーんにもしないよ。だから大丈夫だよ~。」
まるで子供をあやすかのように、愛ちゃんの背中をトントンとたたく。
おそ「ほら、あったかいでしょ。」
『…。』
心なしか、月明かりにほんのりと照らされる愛ちゃんの顔が穏やかに見える。
おそ「…。」
誰かと身体を密着させて寝ることなんて、最近無かったから忘れてたけど…
改めて、人肌って温かいな。
おそ「…ハァ。」
それにしても俺…
何やってんだろ。
静かに寝息を立てる愛ちゃんの顔を見て、自分の突発的な行動を思い返す。
あの時…何故引き金を引く手を止めたのだろう。
きっと弟達には誤解されてるだろうけど、性欲処理の玩具にするために持って帰ってきた訳でもない。
考えるに考えても、特に明確な理由は思い浮かばない。
別に、とびっきりタイプでもないしなぁ…?
そう考えると俺。
おそ「マジで意味わかんねえな…。」
頭で考えるより、身体が先に動いた。
一番的確に表現するならこの言葉だ。
普段は他人に興味なんて湧かないし、女ならいつでも買えるのに。
自分の取った行動に少し疑問を感じながらも、俺は眠りについた。