第16章 16.震える手
タクシーの中でもずっと二宮くんは
あたしの手をギュッと握ってくれてた。
「お姉さん、大丈夫ですよ。大丈夫」
そう優しく言ってくれる二宮くんに、こんなとき愛しいと思ってしまう私は非常識かもしれない。
「あ、ちゃん!」
都内の市民病院に入ると、すぐに大野先輩があたしたちのところに来た。
大野先輩の顔が全てを物語ってる。
「ごめんね…
オイラ、言おうか迷ったんだけど…」
『あの……しょ、翔くん…は…?』
どうしよ。手が震えてる。
ねぇ、二宮くん…どうしたらいい?
「……」
無言のまま大野先輩の顔は下に俯いた。
ねぇ……なんで…どうして……
「大丈夫だから……大丈夫
大野さん、あの…部屋は?」
二宮くんはまたあたしの手を握って、
大野先輩にそう聞いた。
「集中治療室…」