第18章 18.奇跡と運命
翔くんが目覚めたことは奇跡に近いらしい
それほどの奇跡が起きたのに、
あたしの頭の中には二宮くんしかいない。
「…」
酸素マスクであまり声が聞き取れない
だけど、その声は優しい翔くんだった。
「の…泣き声が……して」
『あたし……の……?』
「う…ん」
その返事に戸惑った。
翔くんは夢の中でも優しくて、
「んじゃあちゃんは、
翔ちゃんの命の恩人ってことじゃん…ふふ」
着替えを持ってきた大野先輩が、
個室の病室にもってきた。
まだ安心はできないけど、お医者さんはとりあえずは…っていうことで個室の病室に翔くんは移動した。
「ありがと……うね…」
弱々しく翔くんがそう言う
"ありがとう"だなんて言わないでほしい
あたしは何もしてないのに…
「翔ちゃん、寝なよ~?」
「う…ん……」
少しあたしと目を合わせてから、
翔くんはゆっくりと目を閉じて眠った
「二宮くんは帰ったよ」
その大野先輩の言葉に反応できないまま
下を向いていた。