第1章 娼婦
「あの、横から失礼いたします。
申し訳ありませんが当店での娼婦、並び娼妓の買い取りは受け付けておりません」
私が言うと、ギョッとした顔で振り向くオーナー。
青を通り越して紫がかったその顔に思わずどうしたんですか、と声をかけようとするも、それはかなわなかった。
金髪碧瞳の彼が、私の顎を掴んだからだ。
「っ!」
いきなり強い力で腰を引かれた私は、思わずバランスを崩して、彼に凭れるようにしな垂れかかる。
「なら、この店は今日限りだな」
「!?」
オーナーが声にならない声を上げる。
私は彼に顎を掴まれた状態のまま、口を開いた。
「何故ですか?」
「・・・融通の利かん店など、この国には必要ないからだ。
頭の固い者は、何においても戦況を悪くする」
彼の冷たい声が騒々しかった部屋に響き渡る。
そういえば、いつの間に止んだのだろう。
つい先ほどまでは、ボソボソと何か話しこむような声が絶え間なく聞こえていたというのに。
彼の蒼い瞳を見つめながら考えていると、馬鹿でかい声が店内に響き渡った。