第1章 娼婦
傍若無人。
そんな言葉が頭を通り過ぎたけど、買うっていうなら買われるしかない。
私に是も否もありはしないのだから。
食と、住むところさえ確保できるならば・・・いや、生きているなら、なんだっていいし、なんだってする。
激務だろうと、汚職だろうと。
幸い、私には感情が無い。
嬉しいとか悲しいとか、つらいとか。
私にはわからない。
別に知る必要もないだろう。
知って何になるというのか。枷にしかならない重りをわざわざつけようなんて、いったい誰が思う?
少なくとも、私は縛られたくはない。
恋愛とか、情とか、そういうものに。
間違いなく面倒であろうその感情を知ろうとは思わないし、知りたくもない。
だから、私はこれでいい。
死ぬために生きる私にとって、死こそが生きる理由で、死こそが私の目標地点なのだから。
「も、申し訳ないのですが、と、当店ではいくらいただこうと・・・」
オーナーが口を震わせて答える。
馬鹿みたいに顔を蒼くして、歯ががたがた言っている。
この時の私は、彼が怖がっている、なんて気づかないし、そもそもの問題、感情を表す言葉なんて知らなかった。
オーナーのどこかぎこちない言葉を聞きながら、私はふとある事を思い出した。