第3章 オヒメサマ
ロスタリアの隣国で、世界有数の力を誇るウィアグラス。そして、その国はほぼ謎に包まれているというのが実情だった。
王家の姫は巫女と呼ばれ、生来未来を読むことができると言われている。そしてその力は未だに真実か否かも定かになっておらず、ウィアグラスはこの世界で最も異質で、謎の多い未知の領域となっていた。
しかし、其れは悪魔でも一年前までの話だ。
「ごきげんうるわしゅう・・・。
ロスタリア国第二王子、メリア=ロスタリア様」
恭しげに彼女が頭を下げた。薄い羽衣のようなスカーフがふんわりと舞い、彼女の香料がだいぶ離れた此処まで香ってくる。
「・・・」
何かを思いつめるような、見ている此方が切なくなるような痛切な面持ちを浮かべ、メリア王子は口元を引き結ぶ。メリア王子の反応をうかがう彼女に、慌てて側近の人が口を挟んだ。
「メ、メリア王子、此方はウィアグラス新国王陛下の皇女様、ソフィア様になります」
「新、国王陛下、ね」
「・・・?」
皮肉気に小さく呟いた言葉は彼女まで届いていないようで、彼女が可愛らしく小首をかしげた。