第3章 オヒメサマ
カタン。
物音が、部屋に響いた。
「・・・?]
そちらを見やれば。
スフィアと同じ色の瞳が、私を見つめた。
・・・誰だろう。
薄いシーツを身に纏った私にわかることは、ただ一つ。
それは、彼がスフィアではないという事。
「ふぅん、兄さんにしては面白いもの拾ってきたね」
ハスキーで、中性的な声。
雪がちらちらと舞う景色を背負うように立った彼が、悪戯気に笑う。
それが、私とロスタリア国第二王子、メリア=ロスタリアの初めての出会いだった。
◆
謁見の間。
何故か一緒についてくるように言われた私もメリア王子の後ろに控え、辺りを見守る。シンと静まり返った空間の中、カツン、カツンという、踵を鳴らし歩く音が大理石の廊下に響く。
その人は女性だった。
煌びやかな身なりで、栗色のその髪は横に流し簪で結われていた。彼女が一歩踏み出すたびにシャラン、と鈴音が涼やかに鳴る。
「・・・ウィアグラスとか聞いてないんだけど」
姿勢を正したメリア王子が小声で、そして鬱屈そうに言葉を発した。