第2章 *名前
「なに。
話の途中なんだけど」
ぶっきらぼうに言い放つ彼に、深く頭を下げた侍従が張り詰めた声で答える。
「も、申し訳ありません!ですが、不測の事態が起こりましたので、是非ともお話聞いていただきたく・・・!」
「一応聞くけどさ、なんで俺に言うの?」
切羽詰まるように話す侍従に対し、彼はつまらなそうに瞳を細めた。
「スフィア第一王子は他国との識見にてロスタリアを離れられています!第一王子が不在の今、王族公務ができるのは第二王子のメリアさま以外おられません!」
ロスタリア国、第二王子。メリア=ロスタリア。
彼の名前はそういうらしい。スフィアよりも短く整えられた絢爛の金髪に、海の様に碧い双眸。どこか幼さを感じさせる彼の白い首元には、一つのホクロがあり、彼のかわいらしさを引き立てる。
「・・・兄さんからは何も聞いてないんだけど」
不満げにメリア王子がつぶやくと、頭を床に打ち付けん勢いで侍従が低頭する。
「それが、連絡の行き違いだったようです!」
「はぁ?なにそれ。
・・・ねえ」
「!は、はい」
まさかこのタイミングで声をかけるとはおもっていなかったので、若干裏返った声が口から出た。