第2章 *名前
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スフィアと同じ色の瞳が、私を見つめた。
・・・誰だろう。
薄いシーツを身に纏った私にわかることは、ただ一つ。
それは、彼がスフィアではないという事。
「ふぅん、兄さんにしては面白いもの拾ってきたね」
ハスキーで、中性的な声。
雪がちらちらと舞う景色を背負うように立った彼が、悪戯気に笑う。外の窓枠に降り積もる雪がなんとも幻想的に映り、彼の雰囲気にあっている。
ーー私に何の用だろう
思わず疑問を抱いた私に、彼が短く聞いてくる。
「アンタ、名前は?」
「と言います」
「!」
彼の瞳が驚いたように短く瞬かれる。
スフィアと同じブロンズ色の髪と、碧い瞳が印象的な彼は、そのまま数秒黙り込むと、はぁとため息を吐き、そしてまぶたを閉じた。長い睫毛が月光に映されて、白い肌に影を落とす。
「いい名前だね」
「そうですか?
確かに、この国ではあまり見かけませんが」
「いい名前だよ、なんていったって「メリア王子!!」」
バンッ、という扉の開閉音が聞こえ、次いで焦燥を露わにした侍従が部屋に転がり込んでくる。言葉を遮るようにされた彼・・・メリアと呼ばれたその人が、苛立ちを隠さない様子で口を開いた。