第2章 *名前
「何驚いてんの」
蒼茫の眸が私をチラリと一瞬見るも、彼はそのまま話をつづけた。
「はどうすればいいと思う?」
「え・・・?」
初めて、困惑するような声音が口から滑り落ちる。
無機質だった私の声の変化を感じ取ったのか、メリア王子が続けて私に言った。
「俺さ、実をいうと公務なんかよりアンタといたいんだよね」
「メ、メリア様・・・っ」
慌てたように侍従が声を上げるが、メリア王子はそれには全くもって構わずに、緋色の上着を脱ぎ捨てた。
バサ、という衣擦れの音が柔らかく響く。
下には純白のシャツを着ていたようで、服の色が変わった彼は先ほどとは違い、また新鮮に映った。
ラフな格好になったメリア王子は一気に休日モードだ。
先ほどの質問にどう答えようかと悩んだ私は、やがて直ぐに答えを出した。メリア王子の私を見る視線がどこか楽しげなのに気が付かないまま、私は思ったことを口にする。
「私は、王族ならば王務をする義務があると思います」