ENDLESS L♥VE【DIABOLIK LOVERS】
第4章 突然の招待
最初はただの嫌がらせ、もしくは脅迫だと思った。
でも、この手紙には有無を言わせない何かがあった。
同封されていた地図に目を通す。赤で記しを付けられているところに向かえばいいのだろう。そこは、このマンションからそう遠くに離れていなかった。
しかも、そこは神無町で有名な〈オバケ屋敷〉だ。
これなら、嫌がらせ、と捉えてもいいのかもしれないけど、今のわたしはどうも判断力、もしくは慎重さに欠けているのだろうか。不信感を持ったのは一瞬だけで、それはあっという間に消え去った。
そして、わたしは何かに急かされるようにして荷物をまとめ始めた。
服や貴重品くらいしか持っていくものがないから、荷物はあまりかさばらずにすんだ。
服と貴重品以外に持っていくとしたら、写真だけ。
唯一無二の家族写真。
わたしがまだ今よりずっと幼い時に撮った写真だから、母も父も写っている。その写真に写っている父は最後に見た父より大分若いし、顔も穏やかだ。母との思い出など何も覚えていないけど、すごく楽しそうに笑っている。
わたしは父と母の顔を思い出せない。
ショックから記憶を封じているのか、ただ単に昔のことだから思い出せないのか。
特に父に関してはひどいものだ。
この写真に写っている父か、無残な死体と化してしまった、もう原型も留めていない父の顔しか思い出せない。
これは、わたしに対する皮肉なのだろうか。