第31章 -困る?困らない?-(月島蛍)
「ごめんね。付き合わせちゃって。」
「いえ。宮岡さんと行くのが、1番正解でしたし。」
「え…⁈」
合宿の準備中、思いの外買い出しがたくさんあり、谷地さんには体育館の準備をお願いして、潔子は食品、わたしはスポドリやテーピング等の買い出し班。荷物持ちを1年生にお願いしたら、案の定…田中と西谷も出てきて、誰が潔子と行くかで一悶着。
そんな中、ワチャワチャ揉めている間に月島くんは、「じゃ、ボクは宮岡さんと行きますから。後はそっちで決めてください。」そう言って、わたしの手を引いて体育館を出たのだった。
「ま…たしかにね。」
ついさっきの体育館でのコトを思い出し、わたしは冷静に納得したふりをしたけど、本当は今…心臓がヤバい。
月島くんにギュッとされた手が…まだ熱い。
さっきみたいなことをされたのは初めてで、不覚にもドキドキしている自分がいた。
月島くんは可愛い後輩なのに…。
「月島くんだ♡」「やっぱりカッコイイね♡」
「…⁈」
月島くんと並んで歩いているとすれ違った女のコたち…たぶん1年生が話すのが聞こえてきて、ドキッとしてしまう。
「月島くんて彼女いるの?」
「ハ⁈いきなり何なんですか?」
たしかに唐突に聞いたかもしれないけど、月島くんはこの上なく嫌そうにわたしを見下ろしてきた。
「あ…その…彼女いるんなら、買い出しでも、わたしと2人きりは良くないのかなぁ…とか。」
月島くんに彼女がいるって聞いたコトなかったけど、もし、彼女がいるなら、月島くんならうまく隠してそうだし…。
「はぁ…そういうくだらないコト言わないでください。」
「ごめんごめん。」
別にくだらなくはないんだけどなぁ…。
「彼女なんていないですから、宮岡さんと買い出しに行っても何も困るコトはありません。」
「そっか。」
ハッキリ断言する月島くんのことばになぜだか心がスーッと晴れていった。
「そういう宮岡さんはどうなんですか?」
「え?」
「ボクと2人きりで困るコトないんですか?」
思わぬ月島くんの返しにわたしは笑ってしまった。
「あはは。困るコトないよ♪彼氏いないもん。」
「じゃあ、お互いちょうどいいですね。」
「え⁈」
「こうやって2人きりで歩いても…手を繋いでも誰も文句言わないんですよね?」