第27章 -偶然か必然か-(黒尾鉄朗)
週2〜3回来てるいつものカフェ。
いつも頼むのは、
ショット追加のトールサイズのカフェラテ。
空いていれば、
お気に入りの角の席に座り、仕事をする。
仕事に行き詰まった時のわたしの最高の気分転換術。
今日も会社帰りに明日の準備がしたくて、いつものカフェでいつものドリンクを頼み、いつもの席が空いていたので、そこへ向かう。
ガシャン…‼︎
でも、いつもの席に座ろうとすると、バッグが隣の席の人のコーヒーに当たってしまい、コーヒーをこぼしてしまっていた。
ウソ⁈どーしよう⁈
隣の席の人は、お手洗いにでも行っているのか、席にいなかったので、急いで店員さんを呼んで、布巾を借りた。
カップが紙カップだったのと、隣の席の人の持ち物にコーヒーがかからなかったことが不幸中の幸いだった。
「あの…?」
こぼしたコーヒーを店員さんが拭いてくれていると、隣の席の人らしき男性が戻ってきて、自分の席の状況にポカンとしていた。
「あの‼︎すみません‼︎わたしがコーヒーこぼしてしまって…。コーヒー、弁償します‼︎」
「あ…いや…」
よっぽど驚いたのか、その男性は固まっているようだった。
「コーヒーはもう一度ご提供するから大丈夫ですよ。」
男性が固まっていると、店員さんが優しく申し出てくれたのだけど、その男性は落ち着きを取り戻し、コーヒーを辞退した。
「いや。もう帰ろうと思ってたんで、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
「かしこまりました。」
店員さんが戻っていったので、わたしはもう一度男性に謝ると、やっぱり笑顔で「気にしないでください」と言ってくれる。
わたしはやっと少しホッとして、男性の隣の席に座り、仕事の資料を取り出していると、男性がちょうど荷物をまとめた所だったので、わたしは立ち上がってもう一度謝った。
「あの‼︎本当にすみませんでした…」
「いいって。気にしてねぇし。」
「でも…」
「んじゃ…」
「…⁈」
男性はジッとわたしを見つめてきた。
まるで自分の顔をわたしに覚えさせるかのように…。
「もし、また会えたら、その時ご馳走して?な?」
「えっ⁈」
「じゃ、またな。」
わたしに気を使ってくれてたのかな…
男性はそのまま行ってしまった。
また会うことなんてあるわけないのに…
そう思っていたのに…