第21章 -ポラロイド-(黒尾鉄朗)
「クロ…」
「ん?なんだ?」
「コレ…はい。」
カラオケ店から出て、メッセージを書いたポラロイド写真をクロに手渡す。
「お〜。サンキュ。」
クロはポラロイド写真を見て、一瞬不思議そうな顔をしてから、カバンにしまおうとした。
「行こ!」
「…っ⁉︎おい‼︎きづな‼︎」
わたしがクロの前を歩き出すと、クロがわたしの手を握ってそのまま後ろから抱き締めてくれる。
「こんな可愛いコト書いたのに、なんで逃げんだよ?」
心地いい聞き慣れたクロの声が耳元で響く。
「は…恥ずかしい…」
「つぅか、裏側に書くなよ。」
「だって…」
「そんなんじゃ、”一応”外さねーぞー?」
「えっ⁈」
思わずクロの腕の中で振り向いて見上げると、ニヤリとしたクロの顔があった。
「バーカ。とっくに外れてんだかんな。」
「クロ…?」
「可愛い可愛いきづなを彼女にしてやるーって言ってんのー♪」
そう言ってクロはギューッとさっきよりも強く抱き締めてくれる。
「なんか上から目線〜。」
わたしはクロの腕の中で文句を言ったけど、嬉しい気持ちが伝わるように、わたしもギューッとクロの背中に手を回した。
ポラロイド写真の表側は何も書かなかった。
でも、ポラロイド写真の裏側…真っ白な裏側に
『HAPPYBIRTHDAYクロ!
クロの可愛い彼女になりたいから、”一応”は外してよね!大好き!』
ラブレターを書いてみた。
写真を撮る瞬間にクロにギュッと握られた…その瞬間を文字で隠したくなかったから。
---End---