第17章 -歓喜-(黒尾鉄朗)
「どシャーット‼︎」
「やっくん‼︎動いちゃダメ‼︎」
「そういうオマエも見てんじゃんかよ。」
「う…。」
春高がかかった戸美戦…まさかのやっくんの戦線離脱…でも皆頑張ってる。
クロのどシャットが決まった。
「つぅか、見惚れてた?」
「う…うるさい‼︎やっくん、動かない‼︎」
わたしはやっくんの足を冷やす氷を押し付けた。
「つめてっ‼︎」
そんな中、リエーフのスイッチが入ってきた。それにクロのバックアタックも決まって、第1セットをウチが取った。
「クロ…」
「おう。サンキュ。」
やっくんから離れ、皆にドリンクを配り、最後にクロに渡した。
「…」
「なーに心配そうな顔してんの?」
「な…っ⁈」
「信じて待ってろよ?」
「…っ‼︎」
「オレらのコト。」
クロはそう言うとわたしの頭をポンとして、皆の輪の中に戻っていった。
カッコよすぎだよ…。
クロだって…いつもカッコいいよ…
第2セットが始まって、クロは絶対しんどいはずなのに、それを表に出さなかった。
でも、研磨の鋭い読み…
山本のレシーブ…守備までできるなんて、さすが音駒のエースだよ…
いつでも落ち着いてる海クン…
決める時にしっかり決める福永…
しっかり拾えるようになってきた芝山…
あと少し…あと少し…
…っ⁈
クロ…手…押さえてる…⁈
「クロ⁉︎」
「きづな!クロんトコ行ってこい!」
やっくんに言われ、クロの元へ走る。
「クロっ!」
「しっ…。テーピングしてくれ。爪やった。」
「うん!」
クロの指を丁寧に手当てする。
手当てをしている間、クロはゲームから意識をそらさないようにコートを見つめている。
「クロ…すぐ戻れる。」
「おう。」
「皆のコト、信じていいんでしょ?」
「…‼︎おう。」
その間も…試合は進んでいく。
福永が拾って、リエーフが打つ。
決まったと思ったのに大将クンがまた拾ってしまう。
でも…
リエーフが…ブロックで相手のコースを…誘導…した?
芝山の完璧なレシーブ…研磨のトス…エース…山本のスパイク…
「「…シャアァァァァァ!!」」
勝った…勝ったんだ!!
皆、すごい!
よかった!本当に…よかった…!
「芝山〜!ヒック…ボール…ぐすっ…こっちぃ…」
「はいっ‼︎」