第10章 -夏祭りと告白と-(臼井雄太)
「臼井くん…」
見覚えのある浴衣…忘れられない。
去年と同じ浴衣できづなさんはオレの目の前にいた。
「お久しぶりです。」
「久し…ぶり…」
戸惑ったように微笑むきづなさん…
きっとオレと同じ…。
「今年は…髪を下ろしているんですね。」
「…‼︎覚えてたの?」
きづなさんは去年は髪をアップにしていて、この水色の朝顔の柄の浴衣を着ていた。今年は髪を編み込みにしていたが、ハーフアップのようにしていた。
「もちろん。その浴衣もやっぱり似合ってますね。」
「…⁈」
お世辞でもなんでもない本音なのにきづなさんはオレのことばに赤くなった。
「臼井くんは…今年は浴衣なんだね。」
「あぁ。水樹が急に言い出して…」
「ふふ…水樹くんらしいね。」
水樹の名前を出すとクスクス笑うきづなさん…思わずきづなさんの手を取ってしまう。
「臼井くん…⁈」
「今きづなさんの目の前にいるのは、水樹じゃなくてオレですよ?ちゃんとオレを見て…」
オレはきづなさんをジッと見つめた。
「去年ははぐらかされてしまったけど…」
去年の夏祭り…オレはきづなさんに告白した。でも、きづなさんはイエスともノーとも言わなかった。ただ、「臼井くんの…聖蹟サッカー部の邪魔はできない。」と言っただけだった。
「もうはぐらかさないで。オレ…今も…きづなさんが好きです。」
きづなさんは真っ赤になりながらも、ゆっくりオレを見つめ返してくれる。
「…ありがとう。嬉しい。でも…」
「オレ…意外としつこいですよ?」
オレはきづなさんのことばを遮った。
「とりあえず地獄まででもついていくと思います。」
「地獄?臼井…くん?」
キョトンとしているきづなさんは、なんだか年上に見えなくてすごく可愛らしかった。
「きづなさんが部員とは恋愛関係にならない…そう決めていたのは知っています。」
「…っ⁈」
きづなさんは当時からモテていた。たぶん今もモテるんだろうけど…。サッカー部で狙ってる奴もいたし、サッカー部以外にもきづなさん狙いの奴はいた。
でも、きづなさんはオレの知る限り…彼氏はずっといなかった。