第41章 -ライバル-(黒尾鉄朗)
「鉄朗ーー‼︎見せてってばぁ‼︎」
久しぶりに夜に部屋に来たので、甘い時間になるのを当然期待して、オレはベッドに寝転んで待ってんのに、数学が苦手なきづなは、今日の宿題の数学のプリント片手にベッドの下に座って、オレに見せろと懇願している。
「そんくらい自分でやんなさーい。」
「やってもわかんなかったんだもん。」
「がんばれー」
「クロくーん…鉄朗が冷たい。」
「…おい。」
きづなが"クロくん"と呼んだのは、オレではなく、ネコの抱き枕みたいなクッション。きづなが誕生日にオレにくれたものだけど、だいたいココに来たときは、きづながそのクッションを抱きしめている。オレからしたら、憎き相手ではあるが、きづなが帰ってしまった後は、オレが抱き締めてるとか…そんなことは…まぁ…いや…なぃ…ような…まぁ…
「じゃあ、見せてー?お願いお願いっ‼︎」
「ダメー。」
可愛く頼むきづなに思わず屈してしまいそうになるが、お願いしたいのはオレも同じ。オレは違うお勉強をきづなにお願いしたいのだから。
「じゃー夜っくんに見せてもらうー。」
「やめとけ。夜っくん、けっこう凡ミスしてっから。」
「じゃー海くんー!」
「海も自分でやれって言うぞー。」
スマホを取り出し、誰かに頼ろうとするきづなをオレは全て牽制する。
「うわーん‼︎鉄朗がイジワルするよー!クロくんっ‼︎」
「きづなのためを思って言ってんのー!」
「イジワルだよねー?クロくん?」
…っ⁈
いつもやってる…やってはいるが…きづなはクロくんと呼んでるそのネコのクッションを思いきりギュッと抱き締める。
つまりは、クロくんはきづなの豊満な…あの柔らかな胸の中にいるわけで…つぅか、おんなじような名前で呼んで抱き締めんなよっ‼︎紛らわしいっ‼︎
「自分で選んだコだけど、やっぱり抱き心地いいなぁ。」
きづなはさらにギュッと抱き締め、クロくんとやらに頬擦りまでしている。オレからしたら若干不細工なネコなのに、そのネコと目が合うと、ふふん♪と笑われているように感じる。
「おいっ‼︎きづなっ‼︎」