第2章 縁の下の力持ち
「…力って、やっぱりバカだね。」
「は!?今の流れからどうやってバカが来たんだよ!」
「甘えるなんて当たり前じゃん。」
無理やり、力の声に被せて、私は続けた。
「甘えるなんて当たり前。寧ろ、あんなすごい主将がいて、甘えない方が信じらんない。
大地先輩…だっけ?頼られてんだね?条善寺の試合から見てたけどさ。
すごい…って伝わってきた。あの人が見えない大黒柱で、絶対的な存在で、
烏野の自慢の主将なんだよ…。
痛いくらいにわかったよ。その事が、和久谷南の試合で…
だからって、力も同じようになれるとは、思わないけどね。
だって違うでしょ?大地さんは、目に見えて怒鳴ったり、褒めたりしてくれるけど、
力は違う。
アンタは、私から言わせれば、絶対、一番、敵に回したくない人だもん。
見えない所から、ジワジワ侵略してって、気づいたら力なしじゃダメにするんだから。
怒ったり、態度で示すんじゃなくって、
相手が一番言われたくないことをグサって、的確なタイミング、絶妙な角度でブッ刺してくるから叶わないって思っちゃうの。
それがアンタだよ。
大地先輩には、それができないけど、アンタにはできんの。
自分を否定すんな!そう言ったのは、力でしょ?
アンタなら大丈夫。力1人でチームの得点を取るわけじゃないんでしょう?
烏野のバレー部には、1.2年だけで、10人の仲間がいる。
その仲間を信じて、下から持ち上げんのがアンタじゃない。
信じなよ。2年には、常識人の成田や木下だっている。
1年だって、山口くんや谷地ちゃんもいるじゃない。月島くんだって、ひねくれだけど優しい子だし。
単細胞バカだって、根は優しいしいい子でしょ?
大丈夫。私だっているんだから、人と比べたらもったいないよ。」