第2章 Crime
翔と俺は小学校時代からの友人で、幼馴染ってやつだ。
翔の家は代々弁護士の家系で、翔も幼い頃から弁護士になるべく、厳しい教育を受けていた。
俺はそんな翔を不憫だと憐れみながらも、心の片隅では羨ましくも思っていた。
だって俺には将来の希望も、ましてや夢なんて見れる環境にはなかったから。
ギャンブル好きな父ちゃんは多額の借金を作った挙句、まだ幼い俺と母ちゃんを残して蒸発した。
その後母ちゃんは女手一つで俺を育ててくれたけど、生活は常に困窮を極めていて、飯だって禄に食べられない日だってあった。
幼い俺を抱えて、父ちゃんが残した借金を返すために、母ちゃんも必死だったんだと思う。
でもそんな生活は長くは続かなくて…
母ちゃんは夜の仕事を始めた頃から、少しずつ変わっていった。
俺の知ってる、優しい笑顔の母ちゃんは、どこにもいなくなった。
毎晩男と飲み歩き、家に男を連れ込むことも度々あった。
その度に俺は、綿の薄くなった布団を頭から被り、目と耳を塞いだ。
母ちゃんは”母ちゃん”じゃなくなった。
ただの”女”になったんだ。
男に溺れ、酒にも溺れ、挙句の果てには薬に手を出す様になった。
母ちゃんは”人”でもなくなったんだ。
そして俺は…捨てられた。