第7章 Order
「”秩序は乱すな”だろ? 分かってるよ。だから安心してよ」
俺だってそこまで馬鹿じゃない。
井ノ原先生が何を不安に思っているのか、全く分からない訳じゃない。
「分かってんならいいや。じゃ、また明日の朝来るから」
そう言い残して井ノ原先生が部屋を出て行った。
それと入れ替わるように、マサキが扉の向こうから顔を覗かせた。
「サートシ? 調子はどう?」
マサキの明るい笑顔と、弾むような声に、殺風景な部屋が一気に陽が差したように明るくなる。
「明日”房”に帰れるんだって?」
「まあな…」
マサキの顔から笑顔が消える。
膝の上に乗せた拳をジッと見つめるように、顔を俯かせたまま黙り込んでしまう。
「どうした?」
ベッドから少しだけ身を乗り出し、膝の上のマサキの拳を手で包み込む。
「オレ、耐えられる自信ない…」
「マサキ?」
「サトシが酷い目に遭ってんの、オレ耐えらんないよ…」
俺の手の中で、拳がプルプルと震える。
「俺は大丈夫だから。お前が傍にいてくれたら、俺は…」
俯いたマサキの頬を手で包み、ゆっくりと距離を縮めると、そのままマサキの頬に唇を寄せた。
「お前がいれば…」
翔、
いいよな?
俺、やっぱ耐えらんねぇわ…
お前と離れてんの…
狡い俺を、
許して…
「Order」完