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Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第7章 Order


長い…
とても長い夢を見ていた。

重い瞼をゆっくり持ち上げる。
霞みがかった視界に映ったのは、見覚えのない景色。

白い天井、風邪にそよぐカーテンの隙間から見える鉄格子が、それが現実だということを証明する。

「…トシ? サトシ? 気が付いたの?」

俺の名前を呼ぶ声。

首を少しだけ声のする方に動かしてみる。

「…っ!」

突然襲った鈍い痛みに息が詰まりそうになりながら、ゆっくりゆっくり首を動かす。

そして霞んだ視界に映った、俺を心配そうに覗き込む…顔…?

「しょ…翔…」

掠れた声で名前を呼び、管の繋がった腕をゆっくり持ち上げる。

「…会いたかった、翔…」

伸ばした俺の手を、暖かい物が包み込んだ。

「サトシ、良かった…」

違う!
翔じゃない!
翔の声じゃない!

「…誰?」

「オレだよ、マサキだよ。良かった、ホント良かった、意識が戻って…」

包まれた俺の手に、熱い滴がポツリと落ちる。

「そっか…、マサキか…」

翔じゃないんだ…
そっか…
そうだよな、翔がこんな所にいる筈ないよな…

一気に込み上げる、言いようのない寂寥感に、胸が締め付けられる。

「どうしたの? 苦しいの? 医務官呼ぼうか?」

俺を気遣うマサキの声が、遠くの方で聞こえる気がした。
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