第7章 Order
「後の始末忘れんじゃねぇぞ?」
ブースに俺を一人残して男が出て行く。
頭上から降り注ぐシャワーの飛沫が、男の欲と涙を流していく。
こんなことがいつまで続くんだろう…
終わりの見えない絶望感が俺の心を支配する。
こんなじゃもう翔には会えねぇや…
こんな汚れた俺じゃ、もう翔に愛される資格なんて…
ぼんやりと見上げた視界に、ついさっきまで俺の両手を拘束していたタオルが映った。
消えてしまおうか…
怠さの残る身体を起こし、タオルに手を伸ばす。
フックに掛けられたままのタオルは、まるで俺がそうするのを待っていたかのように丸い口を開けている。
ごめんな、翔…
俺は少しだけ背伸びをして輪になったタオルを首に掛けた。
「…翔…」
少しだけ足を浮かせてみる。
「…ッ、グッ…ハッ…」
濡れたタオルが俺の喉元を締め付ける。
息が詰まる…
苦しい…
でも不思議と怖くはないのは、どうしてだろう…
そうか、これでもう辛い思いもしなくても済むからか…
これで楽になれる…
徐々に薄れて行く意識の中に、翔の笑顔が浮かぶ。
『智君、愛してる…』
俺もだよ、翔…
俺も、愛してた
ごめん…