第6章 Alibi
智君が収監されてからというもの、俺の時間は目まぐるしく過ぎて行った。
智君の無実を証明するため、岡田と共にまさに奔走する日々。
確固たる物的証拠を突き付けられた今、頼れるのは事件当時の智君の行動…つまりアリバイだけ…。
とは言っても事件当日のアリバイは、俺自身が一番良く分かっている。
岡田に全てを託して、俺が証言台に立てばいい…
でもそれをしてしまったら、智君はどうなる?
俺が助けるしかないのに…
そもそも智君は俺が証言台に立つことは望んではいないだろう。
智君の考えてることなんて、俺にはお見通しだ。
俺と岡田は手分けして、智君と関わりのあった人物から証言を得ることに駆け回った。
時には門前払いを食らう時だってあった。
被害者とされる女性の家を訪ねた時には、それこそ胸倉を捕まれ、頭からバケツの水を浴びせられた。
寝る時間を惜しんでは、過去の冤罪裁判の公判資料を読み漁り、休日にはその手の分野に強い弁護士の元を訪ねたりもした。
それでも有力な情報を得られないまま、ただ時間だけが無駄に過ぎて行った。
精神的にも、勿論肉体的にも、もう限界だった。
智君のことを思えば弱音など吐いてはいられない。
その思いだけが俺を突き動かしていた。