第39章 Daylight
玄関のドアを開けると、丁度炊き上がったのか、炊きたての白飯の匂いが部屋中に充満していた。
「さて、と…、急がないと…」
でもその前に…
俺はキッチンに立つと、棚の奥にストックしてあったカップラーメンを取り出した。
「とりあえず腹ごしらえだな…」
カップラーメンに湯を注ぎ、出来上がるまでの間に洗濯物を干し終え、少々伸び切った ラーメンをシンクに凭れて啜った。
「よし、やるか」
包丁方手に材料を刻んで、炒めて…
特別な隠し味なんてない、市販のルーを入れて少量の水分で煮込むだけ。
もしあるとすれば、それは…
暫くするとピリッとスパイシーな匂いが漂って来る。
火を止め、鍋に蓋をする。
後は食べる直前にもう一度火を入れればいい。
キッチンを出てソファーに腰を下ろし、壁の時計を見上げた。
「もうそろそろか…」
そう呟いた時、タイミング良く俺のスマホが鳴った。
岡田からのメールだ。
漸く落ち着けた腰を上げて玄関へと向かい、ドアの向うの物音に耳を澄ませる。
コツ、コツ…、と足音が近付いて来る。
同時に俺の心臓も、ドクン、ドクン…、と脈打つ。
やがて足音はドアの前まで来るとピタリと止まり、鍵のかかっていないドアノブがゆっくりと動く。
そしてドアが開いた瞬間、俺は居ても立っても居られず、裸足のままで飛び出した。
驚いたように立ち尽くす首に両腕を巻き付け、物言いたげな唇を自分のそれで塞ぐと、戸惑いがちな腕が俺の背中に回った。
ひさしぶりに感じる体温に堪えきれずに涙が溢れる。
絶対泣かない、って決めてたのに…