第39章 Daylight
俺が翔を…
出来ることならそうしてやりたいし、翔だってそれを望んでいると思う。
でも俺は…
どうかしら、とばかりに覗き込んだ翔の母親に、俺はゆっくりと首を横に振った。
「…どうして? あの子が貴方に会えるのを、どれだけ心待ちにしているか、貴方だって知っているでしょ? なのにどうして…」
「俺…、決めたんです」
「何…を…?」
「俺、翔のマンションで待つ、って…。アイツ、仕事から帰って来ると、真っ先に“飯”って言うんです。だからアイツの好物作って…、それから風呂も入れるようにして…。あ、ビールも買っとかなきゃな…。風呂上がりの一杯が最高の幸せだ、って…アイツ、いつも言ってたから…。それから…」
キスして、大の大人二人が寝るには狭過ぎるベッドで、抱き合って眠って、また朝を迎えて…
俺達の何気ない日常…
特別な物も言葉も何もいらない…、ただ同じ時間を共有出来るだけで…それだけでいいんだ。
「翔が帰る場所、アソコだけだから…、だから俺…」
「分かったわ。貴方がそうしたいのなら、私はもう何も言わないわ。でも一つだけ約束してくれないかしら」
翔の母親はテーブル越しに俺の手を包むと、
「すぐじゃなくていいの…、いつかでいいの…、もしあの子があの人のことを許せるようなったら…、その時は一度でいいから、お父さんに会いに行くように伝えて欲しいの」
あの人を許す…
そんな日がいつか来るのだろうか…?
俺にも、そして翔にも…