第39章 Daylight
門番がゲートの横の、小さな鉄の扉を開く。
ここを抜ければ…
この門を潜れば俺は…
この先のことを考えれば、塀に囲まれたこの場所を出るのが怖くも感じる。
冤罪だったとはいえ、俺が刑務所という特殊な場所にいた、という事実だけは、何をどうやっても消せやしないんだから…
俺は思い切り吸い込んだ息を、一気に吐き出すと、意を決して小さな門を潜った。
「兄ちゃん、おかえりなさい」
俺がそうするのを、今か今かと待ち兼ねたのか、侑李が胸に飛び込んでくる。
小柄な俺よりも、更に小柄な侑李の顔は、俺の胸にスッポリと埋められていて、表情までは見えない。
でも、微かに震える肩で、侑李が泣いてることが分かる。
「バカ、大の大人が泣いてんじゃねぇよ…」
お前が泣いたら俺まで泣きたくなっちまうよ…
ただでさえここ最近涙脆くてこまってんのに…
「ごめん…、でも俺、嬉しくて…。もうこんな風に兄ちゃんに合えるなんて、思ってなかったから…」
「なんだそれ…、バカだな…」
「も、もう…、感動の再会なのに、そんなにバカバカ言わなくたって…、兄ちゃんのバカ」
スンと鼻を鳴らして、侑李が涙に濡れた顔を上げる。
その顔は、俺が知っている、小さくて、俺の後を追っかけ回していた頃の、無邪気な侑李そのものだった。
「あ、長瀬さんは? 一緒に来てんだろ?」
「うん、車で待ってるって。岡田さんも一緒なんだ」
「岡田も? そっか…」
アイツには散々世話になったから、一度挨拶はしたいと思っていたから丁度いい。
「荷物持つよ」
侑李が俺の手から、小さなバッグを引き取る。
「悪いな」
そう大して重い物もないし、なんなら荷物と言える程のものでもないが、車までの距離を考えて、侑李の申し出を有難く受けることにした。