第38章 Apology
「裁判長からは以上です。では、続いて判決に移りますが、宜しいですか?」
裁判長が弁護側、検察側双方に顔を向けると、銀縁眼鏡の端を指で持ち上げた。
そして、
「主文…被告人大野智を………………する」
裁判長の声が、水を打ったように静まり返った法廷内に響いた。
でもその声が俺の耳に届くことはなかった。
全ての音が、激しく打ち鳴らす心臓の音に掻き消された。
瞬間沸き起こった響めき(どよめき)すら、それが歓喜の声なのか、それとも嗚咽混じりの悲鳴なのか…
それすらも分からなかった。
ただ一つ分かっていたのは、判決が下された瞬間、俺の頬を熱い物が伝ったことだけ…
それだけだった…
『Apology』〜完〜