第38章 Apology
10分間の休廷の後、再び開かれた最終弁論…
そう大して広くもない法廷の中央に座らされた俺に投げかけられる質問は、弁護側、検察側共に、厳しい物ばかりだった。
何故同性愛者でありながら結との交際を受け入れたのか…本当にそこに性的関係はなかったのか…
何故嘘の自白をしたのか…
何故翔の父親が関わっていることを知りながら隠していたのか…
何故、何故、何故…
繰り返される言葉に、俺は半ば辟易としながらも、それでも一つ一つ自分の言葉で答えた。
それでも俺の身を襲ったあの悪夢のような出来事に話が及んだ時には、流石に全身の震えが止まらなくて…
目の前がチカチカしたかと思うと、腹の底から苦い物がせり上がって来るのを感じた。
「大丈夫ですか? 最初にも言いましたが、貴方には黙秘権があります。言いたくないことは無理に…」
「いえ、大丈夫…です」
俺を気遣う裁判官の言葉を遮るように、俺は息を大きく吸い込んで瞼を閉じた。
「あの人…翔の父親が坂本刑務官を使って俺を襲わせたってことは、途中から気付いてたって言うか…聞いちまったから…」
薬と行為の後の朦朧とする意識の中で、俺は聞いたんだ。
坂本が誰かと電話してるのを…
そしてその時に聞いた名前が、“櫻井”だった。
俺はその時に全てを悟ったんだ、全ては翔の父親が、児童買春の揉み消しを盾に、喜多川を使って仕組んだことだと…