第37章 Oath
証人尋問が終わり、被告人質問の前に10分間の休廷が言い渡された。
俺の腰には再び縄が巻き付けられ、両手首には手錠がかけられた。
法廷を出て、待合室へと連れて行かれる。
でもそこは開廷前に通されたのとは違う部屋で…
「ここで待つように」
言い渡され、足を踏み入れた瞬間、俺はあることに気がついた。
「な、なあ…、この部屋ってもしかして…」
「どうした?」
ポツリ呟いた言葉に、同行の刑務官が俺を覗き込む。
「いや…、別に大したことじゃねぇよ…」
聞かなくたって分かる。
この部屋に残る懐かしい匂い…
これは確かに翔の匂いだ。
そうか、さっきまで翔がここに…
俺は翔の残り香を全て胸の中に閉じ込めたくて、深く息を吸い込んだ。
不思議なんだけど、自分でも笑っちまいそうなんだけど…
そうしてると、翔がすぐ傍にいるような…翔の腕に包まれているような…そんな気がするんだ。
翔…、俺負けねぇから…
絶対無罪勝ち取るから…
そしたらさ、今度は俺がお前を守るから。
だから俺に勇気をくれないか?
沢山とは言わない。
ただほんの少しでいいんだ、俺にこの裁判を乗り切るだけの勇気を、
俺にくれないか?
そして10分後…
「時間だ。出なさい」
「はい」
俺の最後の戦いが始まった。
『Oath』〜完〜