• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第35章 shrieking


作業を終え、房に戻った俺は、岡田に頼んで差し入れて貰った便箋を机に広げた。

手紙なんて滅多に書かないせいか、鉛筆を握った手が中々動かない。

一体何を書いたらいいのか、言葉すら浮かんでこない。

伝えたい言葉は、こんなにも胸の中に溢れてるのに…

それでもやっとの思いで手紙を書き終えると、それを丁寧に折り畳んで封筒に入れた。

宛名には当然のように翔の名前を書いた。

でも宛先は書いてない。

今はまだこの手紙を出すつもりはないから…

いつか、俺が見事冤罪を勝ち取り、この高い壁に囲まれた檻から出られた時…その時には…

封筒に入れた手紙を、卓机の引き出しの奥に仕舞い、鉄柵が嵌め込まれた窓を見上げる。

そこから見える空は、一点の曇りもない真っ青な空で、その空が、翔の見ている空とどこかで繋がっているんだと思うと、少しだけ嬉しかった。

俺は一人じゃない…。

勿論翔だってそうだ。

俺達はどこにいても、どんなに離れていても、いつだって心は共にあるんだ。

そうだよな、翔?



それから数ヶ月が経った頃、岡田が再び俺の元を訪ねて来た。

心做しか疲れているようにも見えたが、その表情はどこか自信に満ち溢れているようにも見えた。

そしてその手には、再審請求が無事通ったことを知らせる書面が握られていた。



翔…、あと少しだ…

もうすぐお前に会える…



『Shrieking』〜完〜
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp