第34章 Reason
『ごめんね…
あんなに強く誓ったのに…、ずっと傍にいるって…
約束…守れなくてごめん…
もう俺のことは忘れて…』
短い手紙を認(したた)め、ポストに投函した。
宛名は岡田にした。
岡田なら、必ず智君の元へ届けてくれるから…
結局俺は相棒とは名ばかりの、岡田に頼りっぱなしの情けない男なんだ。
最低だな…
乱暴に智君を抱いた後に残ったのは、後悔でも、罪悪感でもない…虚無感と酷い疲労感だけだった。
全てが真っ白だった。
そしてその先に見えるのは、真っ暗な闇…
俺は白い肌を闇の色に染めるかのように、着ていた物を全部脱ぎ捨てると、全身に熱いシャワーを浴びた。
纒わり付く智君の痕跡を、身体を滑り落ちる湯と共に洗い流してしまいたかった。
智君への想いまで真っ黒な闇の色に染めてしまう訳にはいかなかったから…
洗いざらしの髪から滴る雫もそのままに、真新しいカッターシャツを着ると、いつだったか智君がプレゼントしてくれたネクタイを締めた。
「せめて最期くらいは、智君と…」
きっと智君が聞いたら怒るんだろうな。
殴られたりすんのかな…
俺、痛いの嫌いなんだけどな…
普段おっとりしてるくせに、たまに怒ると手が付けられないからな、智君て…
誰もいない部屋で、一人思い出し笑いをしながら、シンクの前に立った俺は、殆ど使ったことの無いソレをタオルに包み、愛用のビジネスバッグの底に忍ばせた。