第33章 Scheme
なんとなく…だけど、予想はしてた。
俺が事件の事を話せば、こうなるって…分かってた。
「考えがある…」
そう言われた時、ハッキリとじゃないけど、心のどこかで覚悟を決めたつもりだった。
でもいざ現実となると、やっぱり受け止められなくて…
三日三晩の高熱から目覚めた俺は、東山と井ノ原がそこにいることすら忘れて、声を上げて泣いた。
そこにある筈の姿を探して、何度も名前を呼んだ。
アイツが…翔が二度と俺の元へと戻ってくることはないと知りながら、翔を求めた。
翔が俺の前から姿を消して数日後、岡田が俺の元を訪ねてきた。
岡田は翔からの手紙を携えていて、俺はそれを読んだ瞬間、自分の勘が間違いでなかったことに気が付いた。
「あのバカが…。ったく、何で俺に一言も言わずに…」
言わなかったんじゃない…、言えなかったんだ。
言えば岡田の事だから、力ずくで止めるに違いないから…
「お前はそれでいいのか? 櫻井がこのまま…」
「良くねぇよ…。良くねぇけど、俺にはどうすることも出来ねぇんだよ…」
この囚われた檻の中では、翔を探すことはおろか、電話の一本だって…
「な、なあ、電話…翔に電話かけて…」
「それは無理だ。ここには電話を初めとする通信機器の持ち込みは禁止されているからな…」
八方塞がり、ってやつか…
「まあ、俺も手は尽くしてみるが…、もし櫻井がお前を尋ねるようなことがあれば、俺に連絡を寄こすように伝えてくれ」
「ああ、そうするよ…」
多分…だけど、翔が俺を訪ねてくることはないだろうけど…
でもな、翔…
信じてるから…
だから、馬鹿な真似だけはすんな…
な、翔…
『Scheme』〜完〜