第31章 Friction
考えてみたら、いつだってそうだった。
あの人は智君と俺の関係を良くは思っていなかった。
いや…違うな。
俺達、と言うよりは、智君を…か…
そんなこと自分でも十分承知していたのに…
それでも俺は自分の思いを貫いた。
智君を愛する気持ちは、俺自身にだって止められないから。
智君の存在自体を疎ましく思っている事を知りながらも、俺は必ず得られるであろう、輝かしい未来を捨て、智君と生きる事を決めたんだ。
でもその結果はどうだ…
俺の愛は智君を不幸にしただけじゃないのか…
愛する人を苦しめただけじゃないのか…
俺が自分の思いを貫こうとしたから、智君は…
長瀬さんの工場から駐車場までの道すがら、俺は溢れ出る涙を隠すことなく流し続けた。
俺はこれからどうしたらいい…
いくら考えても出る筈のない答えを求めて…
胸ポケットに仕舞うことすら出来なかった写真は、俺の手の中でグシャグシャに丸まっていた。
まさか…
そんな筈はない…
そう思いたかった。
でも俺の疑念は、松本の証言によって、確実な物になってしまった。
でも…
岡田に話したら、アイツはどんな顔するんだろうか…
いや、その前に岡田に言えるのか?
この…
このあまりにも残酷な事実を…