第30章 Suspicion
智君が収監されている医療刑務所長から、担当弁護士宛の接見申し立て書の申請がされたことを、所長から岡田を通じて知らされたのは、松本の出所から数日後の事だった。
岡田はすぐに今までの公判資料を始め、松本から得た情報、そして俺達が独自で調べた情報を掻き集めては、俺のデスクに資料の山を作った。
「これも頼むわ。悪いな、お前に任せっきりで…」
申し訳なさそうに頭を掻く岡田に、
「本当だよ、たまには自分でやれば良いのに」
と、そんな言葉を返しながら、岡田が超アナログ人間で、パソコンの使い方すらあやふやなのを熟知している俺は、それ以上の苦情を言うことなく、資料とパソコン画面を交互に観ては、ひたすらキーボードを叩いた。
俺達弁護士は、受刑者と接見することに、余程のことが無い限り、取り立てて制約も無ければ、割と自由に面談をすることが出来る。
本当なら、今すぐにでも会いに行きたい…
智君の決心が変わらないうちに…
そんな思いが無かったわけじゃない。
でも、智君の方から接見申し立てがあったと言うことは、事件解決に繋がる証言が得られる筈。
そう思ったら、弁護を担当する俺達も、それなりの準備をしてから接見に望むべきなのではないか…
岡田と俺は、寝る間を惜しんで公判資料の見直しに没頭した。