第28章 Regret
「もし…、もしもだけど…、被害者である彼女は、喜多川建設絡みの施設にいたんだよな? だとしたら、森田とも…」
至極危険な発想ではあるかもしれない。
「その可能性は低いかもしれんな。ただ、方向性としては間違ってはいないのかもな…」
確かに可能性としては低いのかもしれない。
でも、今はどんなに小さな可能性にもかけてみたい。
ならばどうするべきか…
道は一つしかない。
「なあ、岡田…。所長に頼んでくれないか? 復帰したいと…」
一度は外した弁護士バッジ。
この先嵌めることは、もう二度とないかもしれない、そう思っていた。
だからこそ、事務所にも休職願いを出した。
でも…
「分かった。所長には俺から話を通しておく。但し、だ…。お前と大野の関係も、だ」
俺と智君の関係をカミングアウトしろと…?
「この先何が起こるかは、正直俺にも分からん。勿論、お前自身が証言台に立つことも含めて、だ。その時になって明らかにするよりは今のうちに、ってことだ。ただ、相当な覚悟は必要だろうけどな?」
そう言って岡田は再び流れ始めた車窓に視線を戻した。
覚悟、か…
智君の事件に関わる以上、いつかは打ち明けなければいけないとは思っていた。
でもいざとなると…怖いよ…
助手席の窓を少しだけ開け、外気を取り込む。
すっかり陽の落ちた後の風が冷たくて…
「寒っ…」
俺はポツリ呟いて、両手で自分の身体を抱き締めた。
『Regret』-完ー