第27章 Face
「さて、と… 」
仕切り直しとばかりに、岡田がそれまで下ろしていた足を組み、ソファーの背に背中を凭せ掛けた。
胸の前で筋肉に纏われた腕を組むと、それだけで威圧感が溢れ出る。
一変した岡田の態度に、それまで緩みがちだった松本の頬が、一瞬にして強ばった。
「侑李もいなくなったことだし、聞かせて貰おうか…。お前が大野に何をしたのか…な…」
「ああ、いいぜ? 但し条件がある」
「ほう…、聞こうじゃないか…、その条件とやらを…」
「別に難しいことじゃねぇ…」
松本は緩く首を振ると、一瞬フッと笑って、視線を俺に向けた。
「アンタと話がしたいんだ」
「えっ…、お、俺っ…?」
思ってもない展開に、思わず動揺してしまう。
聞きたくないわけじゃない。
寧ろ聞きたかった。
でも…
「おい、お前先生方を困らせてんじゃねぇよ…。すんませんねぇ…」
俺の心境を読み取ったのか、長瀬さんが俺に向かって頭を何度も下げた。
「い、いえ、そんな…。あの、どうして俺に?」
「別に深い意味はねぇよ…。ただ、知りたくてな…、アイツが死んでもいいって程惚れた“男”の事がな…」
試されてる…
そう思った。
松本は、俺が智君に相応しい相手かどうか…
俺の気持ちがちゃんと智君に向いているのか…
試しているんだ。
ならば俺は…
「分かった。その条件飲むよ」
何を聞かされても…
何をしらされても…
もう逃げたりしないって、あの日俺の隣で眠る智君の横顔に誓ったから…
『Face』完