第26章 Related
智君からの手紙が長瀬さんの元に届いた、と連絡が入ったのは、智君が医療刑務所に送致されてから、一月が経とうとしていた頃だった。
俺は茂さんの店で岡田の終業を待つことにした。
事務所には休職願いを出してあるため、どうにも敷居が高かった。
「いつもならもう来る頃何やけどなぁ…」
二杯目のコーヒーを運んで来た茂さんが、壁の時計に視線を向け、申し訳なさそうに笑う。
「アイツも忙しいんじゃないですか?」
俺と違って、アイツは業界での評価も高いし…
大手弁護士事務所からも、いくつか声がかかっているらしいし…
俺とはまるで違うから…
「もう少し待たせて貰っていいですか?」
時計の針は、閉店時間をとうに過ぎている。
「勿論、かまへんよ。ゆっくりしてってや」
「すいませんね」
俺は茂さんの言葉に甘えることにした。
岡田を待つ間、俺はタブレットを開いた。
そこには、智君の事件に関する資料のデータが入っている。
俺は事実上智君の案件からは手を引いたことになっているから、本来は資料は外部に持ち出すことは出来ない。
それでもこうして資料を手元に残して置けるのは、岡田なりの優しさなんだと思う。
智君との関わりを断ち切らないようにと…