第24章 Confession
「井ノ原医務官はこの先はご遠慮願います」
車椅子を井ノ原の足が一歩舎房に踏み入れた瞬間、刑務官の無情の声が降り注いだ。
「いや、しかし…」
「…ありがとな…」
食い下がろうとする井ノ原を見上げ、俺は小さく首を振った。
俺のためにこれ以上井ノ原に迷惑をかけることは出来ない。
「ほら、行けよ…、俺は大丈夫だから」
「分かったよ…、でも何かあれば…」
顔に似合わず、意外としつこい奴だ。
俺は車椅子の車輪に手をかけ、病室という名の舎房の奥へと車椅子を進めた。
刑務官に制止される井ノ原を、一度も振り返ることなく…
やがて俺の背後で、ガシャンと音を響かせて、鉄格子の嵌まった扉が閉められた。
残ったのは俺と、刑務官、そして若い女性看護師だけだった。
刑務官は車椅子の車輪を固定すると、俺にベッドに上がるように言った。
刑務所とはいえ、いちおうは医療機関であることに違いはない。
生活の殆どは、この寂れた”部屋”の、硬いベッドの上ってことになる。
やっとの思いでベッドに上がった俺の上に、看護師が布団をかけてくれる。
その時一瞬見せた笑顔が、どことなく彼女…結の笑顔に似ている、そう思ったのは、俺の思い過ごしだったんだろうか…
『Confession』完