第21章 Prayer
冷えた空気を纏った廊下に、無情に鳴り響く機械音…
…間に合わなかった…
全身からガラガラと音を立てて抜けて行く力…
どうして…
どうして…
どうしてどうして…っ!
俺は制止する警備の手を振り切り、病室に飛び込んだ。
「櫻井さん…少し遅かったようです。たった今…」
井ノ原医務官の声が震えていた。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だーーーーーーっ!」
ベッドに駆け寄り、まだ体温の残る身体を力任せに揺さぶった。
「なぁ…起きろよ…な? 起きてよ…」
俺を一人にしないで…
俺をおいて逝かないで…
「起きろよっ…!」
絶叫がシンとした病室に響いた。
「櫻井さん…すいませんでした…」
井ノ原医務官の手が俺の肩に乗せられる。
「どうして…? どうしてこんなことに…?」
立っていることも出来ず、俺はその場に崩れ落ちるようにへたり込んだ。
「どうして…? 誰か教えてくれよ…。夢…なんだよな…?」
俺は呪文のように同じ言葉を繰り返した。
何度も、何度も…
「いつから? 一体いつからこんなに…?」
掴んだままの、血管が浮き出た手の甲に頬を剃り寄せる。
少しづつ冷えて行く指先を、止めどなく溢れる俺の涙が濡らした。