第3章 Nightmare
男の手が乱暴に俺の両膝を割った。
最大限に開かれた太腿を厭らしい手つきで撫でられると、その湿った感触に吐き気が込み上げてくる。
「お前、男知ってんだろ? ちょっとした噂になってるぜ?」
あの時だ…
入所時の身体検査。
隠したつもりでも、隠しきれてなかったんだ。
でもだからって…
「大人しくしてりゃ、すぐ済むからな? まぁ尤も、薬の加減で抵抗なんて出来やしないけどな?」
男がクククッと嘲笑うように喉を鳴らした。
そして両膝が抱え込まれたと思った瞬間、なんの予告もなく打ち込まれた楔。
身体を裂くような痛みが全身に突き抜ける。
「ぅおぉ…、あったけぇ…」
獣が歓喜の声を上げ、俺の腰を掴んで律動を開始する。
「ウッ…グッ…」
痛みしか感じない行為に、俺の口から呻きが零れ、瞬間頬に感じた痛みと熱。
「生意気に声出してんじゃねぇよ…この便所がっ…」
便所…
屈辱的とも言えるこの言葉に、気が遠くなる。
「便所は便所らしく黙って股開いときゃいいんだよ…」
男が腰を送る速度を上げた。
布越しに聞こえる肌と肌のぶつかり合う音…
そして徐々に徐々に水気を帯びて行く粘着質な音…
獣の吐き出す荒い呼吸音…
それら全てに俺の全身の毛が総毛立つ。
早く終わらせてくれ…
闇に閉ざされた視界の中でそれだけを願う。