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Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第16章 Limit


「グッ…アァァァァァァッッ…!」

まるで心臓がそこにあるような…
激しい痛みが全身を突き抜ける。

マサ…キ…

「ハッ…ハハ…ハ…、サトシが悪いんた…サトシ、が…」

次第に赤く染まって行く視界に、俺の血に染まった両手を見つめ、ガタガタと身体を震わせるマサキが映る。

「泣く…な、マサ…キ…」

薄れ行く意識を奮い立たせ、涙に濡れたマサキの頬に手を伸ばしたその時…

荒々しく開け放たれた鉄の扉から、数人の刑務官が飛び込ん出来た。

その向には、すっかり血の気を無くした松本と二宮の姿…

「おい、しっかりしろ!」

一人の刑務官が俺に駆け寄り、頬を叩く。

長野…か…

「なんでこんなことに…」

長野が俺の身体を抱え込み、小さく呻く。

「マサ…キは…? マ…サ…キ…」

俺じゃない…
俺は、結を…

殺してない…

止まらない涙と、今にも途切れそうな意識の中で、数人の刑務官に取り押さえられるマサキの姿が映る。

「うあっ…あぁぁぁっ!」

マサキの泣き叫ぶ声が響く。

「やめろぉっ! 離せっ! サトシ…サトッ…!」

暴れるマサキの両腕を抱え込み、引き摺るようにして刑務官達がマサキを連行していく。

「マサキ…ッ! 俺は…っ…」

長野の腕に抱かれながら、俺はマサキの背中に震える手を伸ばす。

「マ…サキ…ィ…」

俺の声が届いたのか、マサキが一瞬俺を振り返った。

いつもの笑顔…
俺を照らしてくれた、太陽のようなマサキの笑顔…

穏やかに笑った唇が、ゆっくりと動く。

『サトシ、愛してた…』

俺はその瞬間、まるで糸が切れたように意識を手放した。


『Limit』完 
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