第16章 Limit
俺が逮捕されてから、もうすぐ一年が経とうとしていた。
ここでの生活にも、少しずつではあるけど、慣れてきた。
…慣れちゃいけないんだろうけど…
同房の奴らとも、それなりに上手くはやっている…つもりだ。
マサキが結の兄だと知って以降、マサキへの不信感は増す一方だし、俺と松本がドライバー事件の犯人だと見込んだ二宮にしたって、何食わぬ顔で小判鮫の如く松本に張り付いている。
松本とは…相変わらずと言ったところだろうか…。
それでも以前に比べれば、お互いの信頼関係は築けているような気はしている。
俺の一方的な思い込みかもしれないが…
そんな中、俺に届いた一通の手紙。
封筒の表面には『検閲済み』の判が押されていた。
ここでは例え手紙一つであっても、外部との繋がりを持つ物には、全て検閲が義務付けられている。
仮にそれが家族からの物であっても、例外ではない。
封筒の裏面には、見慣れた名前。
翔からだ。
翔とは、あれ以来…ここに面会に来た時以来会ってはいない。
会いたい…
そんな気持ちが俺になかったわけじゃない。
でも一度顔を見てしまったら…
今度は溢れ出す翔への想いを抑え込む自信が、俺には無い。
俺の心はまだ翔に向いたままだから…