第3章 Nightmare
時間の感覚が薄れて行く…
この閉ざされた狭い空間に、時間の概念なんてものは必要ないのかもしれない。
必要なのは”罪の意識と向き合う孤独な自分自身”だけ。
そしてそれに押し潰されないだけの、自分自身の心。
唯一時間が感じられるとしたら、決まった時間に運び込まれる粗末な食事と、鉄格子の嵌まった小さな窓から見える空の色…だけ。
壁に凭れることだって許されない、この空間で俺はただ僅かに見える空だけを見つめていた。
翔…
この空はお前へと続いてるの?
翔、
会いたい…
その腕で抱きしめて欲しい…
自然と流れる涙も止められないまま、ただ時間だけが虚しく過ぎて行く。
「7005番、食事だ」
ドアの下に取り付けられた小窓から、食事を乗せたトレーが差し入れられる。
「ありがとうございます…」
正座の格好のまま移動し、トレーを受け取ると、小さな折り畳み式のテーブルを広げた上に置く。
すっかり冷えてしまった食事を前に、手を合わせる。
一汁一菜の質素な食事…
それでも水さえ飲むことが出来なかったあの頃と比べれば、こんなモノでもまだましだと思える自分に、笑いすら込み上げてくる。
「いただきます…」
何に感謝することもなく頭を下げ、味の薄い味噌汁と、パサついた米を口に運んだ。