第15章 Urge
あんなことがあった後も、俺と岡田の関係がそれまでと変わることはなかった。
いや、寧ろそれまで以上の信頼関係が俺達の間には出来たのかもしれない。
俺と岡田はお互いの請け負った裁判と裁判の、僅かな合間を縫ってはお互いに集めた情報の交換をした。
でも、有力な情報なんてほんの一握りで、どれも決め手に欠ける物ばかりだった。
「やっぱり大野の口から聞くしかないか…」
いつものように、茂さんの店の一番奥の席を陣取った岡田が、ネクタイを緩めながら独り言のように呟く。
「なぁ、櫻井? お前一度大野に会ってみるつもりはないか?」
俺だって出来る事ならそうしたい。
『俺に関わるな…』
それが智君の本心だとは、俺だって思っていない。
でもその一言がが、俺の胸には未だ棘となって残っているのは事実だ。
「怖いか? アイツに会うのが…」
”怖いか?”…
そう問われても、俺は頷くことも、反論の言葉を返すことも出来ない。
「仕方ないな…。俺が会うしかないか…」
何も答えられずにいる俺を見兼ねた岡田が、カップに残っていたコーヒーを飲み干した。
そして伝票を手に取ると、徐に席を立った。
「待て…」
俺は反射的に岡田の、伝票を持った手を掴んだ。