第14章 Dilemma
房に戻った俺達を出迎えたのは二宮だった。
松本に向かって「お疲れした」と頭を下げると、俺をちらりと見て鼻を鳴らした。
独居房での出来事をまだ引き摺っているようだった。
松本がいつもの場所に腰を降ろすと、すかさずその横に自分も腰を降ろし、あれやこれやと俺達のいない空白の時間に起きた出来事を喋り始めた。
松本も聞いているのかいないのか…無言でそれに耳を傾けた。
「そう言えば、マサキは…」
いつもなら鬱陶しいくらいに、俺にくっついて離れないマサキの姿が、ここには無い。
「あぁ、マサキなら面会に行きましたよ? なんでも亡くなった妹の友達とかなんとか…」
マサキに妹がいたとは、聞いたことがなかった。
それも亡くなっているなんて…
「妹さんはいつ…?」
「そんなに気になるなら、自分で聞けばいいでしょうが…」
「俺も聞きたい。知ってんなら話せ」
二宮が面倒臭いといった口調で吐き捨てるが、松本の一声に態度を一変する。
「分かりましたよ。でもね、私もそんなに詳しくは知ってるわけじゃないいでね…」
やれやれと言った様子で二宮が肩を竦め、ゆっくりとした口調で語り始めた。
二宮の話を聞き終えた俺は、あまりの衝撃に声を失った。
いや、まさか…
そんな偶然があるんだろうか?
でも二宮の話が事実だとしたら、アイツは何のために?
一つずつ繋がっていく”点”と”線”が、俺を余計に混乱させた。
マサキと結が兄妹だったなんて…
『Dilemma』完