第14章 Dilemma
俺と松本が漸く独居房から解放されたのは、それから三日後のことだった。
身体は酷く疲弊していたが、一人ではなかったことが…松本の存在が近くにあったことが、俺のともすれば折れそうになる俺の心を支えた。
もっとも、松本とは相変わらずで、俺達の関係が深まることもなければ、これ以上冷え込むこともなかった。
まったく俺のために流したあの涙と、苦しいほどの悲痛な叫びは、一体何だったんだろうと疑いたくなる。
そんな中で俺と松本はいくつかの協定を結んだ。
その殆どが松本からの提案だったが、俺は抵抗することもなくその提案を飲んだ。
ぐちゃぐちゃに絡まった糸は、どこか深い所で繋がっている、そう思ったからだ。
松本からの提案が、もしかしたらそれを解いていくきっかけになるんじゃないか、と…
松本と長瀬さんの関係については、結局分からず仕舞いではあったけど、二人が繋がっていることは確実だ。
そしてマサキと坂本…
二人が繋がっているなんて、信じたくはなかった。
でも、考えれば考えるほど、マサキに対しての不信感は高まるばかりだった。
マサキは俺を愛してると言った。
あれは全て噓だったのか?
俺の心の中に誰がいようと、それでも俺を愛してると言ったあの言葉は…
全てが嘘だったんだ。