第14章 Dilemma
どれだけの間そうしていたのか…
意識を取り戻した俺は、冷たいコンクリートの上に投げ出された身体をゆっくり起こした。
「痛っ…!」
痛みの残る身体を引きずって散らばった服を掻き集めた。
何とか服を身に着けると、所々に出来た染みに気が付く。
「はは…は、なんだこれ…」
それが自分の吐き出したモノだと思うと、笑いすら込み上げてくる。
「…松本?」
俺は鉄格子の向こう側へ視線を向けた。
壁に丸めた背中を預け、頭を抱え咽び泣く松本の姿が、そこにあった。
「俺、大丈夫だから…。なぁ、泣くなって…」
這うようにして、鉄格子の際までにじり寄ると、気怠い身体を壁に凭せ掛けた。
「…ったく、アイツ滅茶苦茶やりやがって…」
自嘲気味に言った俺を、格子の向こうから顔を上げた松本が睨み付ける。
その目は真っ赤に腫れあがっている。
「なんだよ…、そんな目で俺を見んなよ…」
「何で笑ってられんだよ…」
「別に笑ってねぇよ…」
「笑ってんだろ…無理すんなよ」
「無理なんて…」
してない…
そう言いたかった。
でも出来なかった。
堰を切ったように溢れ出した涙に、俺は声を詰まらせた。