第14章 Dilemma
俺と松本は揃って懲罰房へと放り込まれた。
理由は簡単だ。
ドライバーが一本不足していることに気付いていながら、黙認していたことへの罰だ。
「お前のせいだぞ…?」
俺にしてみれば不満を漏らしたくなるのは当然のことで…
「お前がちゃんと報告さえしてればこんなことには…」
報告したからといって騒動が起こらないわけでもないが…
「なぁ、聞いてんのかよ?」
鉄格子に挟まれた向かいの独居房で、壁に背中を預け爪を噛む松本に目を向ける。
「うっせぇ、ちょっと黙ってろ…」
俺に目を向けることなく、松本が俺を叱責する。
松本に何か考えがあることは分かっていた。
でなけりゃ、部屋長まで務める松本が、敢えて懲罰を受けるようなことをする筈がない。
「お前、ドライバーくすねたのが誰か分かってんだろ…」
俺はコンクリートの壁に背中を凭せ掛け、膝を抱え込んだ。
ここはあの時の独房とはまるで違う。
明かり取りの窓すらない、四方をコンクリートで囲まれた、底冷えのするような寒々とした空間。
かびた匂いと、剥き出しの便器から上がって来る溝臭い匂いだけが充満する、最悪とも言える環境。
唯一の救いと言えば、鉄格子に阻まれているとはいえ、松本の存在がすぐ近くにあることだった。