第2章 Crime
警察での拘留時間は48時間。
でもその48時間を過ぎても俺が釈放されることはなかった。
元々まともな身寄りもない上に、男と蒸発した筈の母親の存在が災いした。
子供だった俺を捨て、男と逃げた母親は、覚醒剤所持の罪で逮捕歴があった…らしい。
証拠隠滅の上逃亡することを恐れた警察は、拘留期間の延長を裁判所に対して請求した。
裁判所もその請求を認めた。
警察も必死だったんだ、と思う。
いくつもの物的証拠を提示しては、俺に自白を求めた。
そのどれもが俺にとっては身に覚えのない物ばかりで…
「知らない」
と首を横に振れば脅迫まがいの言葉で罵られることも度々だった。
食事すらろくに与えられず、乾いた喉を水で潤すことすら許されなかった。
睡眠だってまともには取らせては貰えず、そうなると嫌でも子供の頃の…親に捨てられた時のことを想い出してしまう。
あの暗い部屋で、ただひたすらに”死”だけを願っていたあの頃…
でも今は違う。
少なくとも今は俺の帰りを待っていてくれる人がいる。
俺には翔がいる。
誰も信じてくれなくても、翔だけは…
だけどそんな強がりもいつまでも続く訳もなく…
”決定的な証拠”を提示された瞬間、俺は首を縦に振ることを余儀なくされた。
翔、俺もう無理だ…
ごめん…
「Crime」完